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新潟地方裁判所 昭和60年(わ)41号 判決 1985年7月02日

主文

被告人を懲役二〇年に処する。

未決勾留日数中一〇〇日を右刑に算入する。

押収してある定期預金証書六通(昭和六〇年押第一八号の5ないし9及び12)並びに総合口座通帳二通(同押号の10及び11)は、被害者涌井勝子の相続人に還付する。

理由

(被告人の経歴及び涌井勝子との関係等)

被告人は、昭和三四年三月東京都内の大学を卒業した後、新潟市内の燃料販売関係の会社等で経理事務員などとして稼働し、昭和四〇年瀧澤東亜子と婚姻して一男一女をもうけ平穏な家庭生活を営んでいたものであるが、昭和五〇年ころ同市内の飲食店にホステスとして働いていた涌井勝子(昭和一二年一一月二〇日生)と知り合い間もなく同女と肉体関係を持つようになつて、以後、同女に家財道具、衣類、装身具等を買い与えたり、年二回のボーナス時に現金を渡すなどしてその生活を援助し、週末には同女方に泊まりに行くなど、親密な交際を続けていたところ、昭和五九年三月新潟県西蒲原郡内の養鶏・孵卵関係の会社の総務部長を辞したのちは無収入となつて、同女に対する経済的援助ができなくなり、そればかりか右失職を知らない妻東亜子に生活費等を渡す必要上、その事実を秘したまま、右涌井勝子から三回に亘り合計二〇〇万円を借り入れるに至つたが、その間失職の事実が同女に発覚したうえ、いつまでも右借金の返済ができなかつたので次第にその信頼を失うようになり、加えて同年一一月ころ同女方を訪れた際玄関に男物の靴があつて同女から入室を断られたことなどから同女に他の男性ができたものと考えて嫉妬の余りその顔面を手拳で欧打して負傷させるという事件を惹起したため、同女から警察署に訴え出ると言われ、必死に謝罪してこれを思い止まらせたものの、同女との仲は益々冷えていつた。

(犯行に至る経緯)

被告人は、右情況にも拘らず、右涌井勝子への未練を断ち難く、また、同女が他の男性と交際しているのではないかとの疑念をいだいた状態で、昭和六〇年一月四日午前一〇時ころ、新潟市内の同女方を訪れたところ、例年のようなお節料理の歓待を受けることができず、切り干し大根などを酒のつまみに出されたことから内心落胆したものの、こたつに入り、二人でウイスキーの水割を飲みながら雑談し、正午ころには同女と性交するに至つたが、その後再び飲酒を続けるうち、次第に、素つ気ない同女の態度に苛立ちを覚え、同日午後二時三〇分すぎころ、同女に対し、他の男性と交際しているのではないかと問い詰めたところ、逆に、「あんたこそ何よ。会社を辞めて。退職金が出ると嘘を言つて私から金を取つたくせに。」などとなじられたため、憤慨の余り、同女の顔面を手で殴打し、同女が逃げるや、これを追いかけて行つて、近くにあつた小鳥の餌用のすりこ木でその頭部を殴打し、更に近くの赤玉石(置石、重量約七八〇グラム)で同女の頭部を殴打したところ、その頭部から血が飛び散つた。

(罪となるべき事実)

被告人は、

第一  前記のような経緯で涌井勝子の頭部を負傷させたことから、かつて手拳で殴打しただけで同女から警察署に訴え出ると騒がれたことを思い出し、今度こそ警察署に訴え出られ、そうなれば自己の再就職もおぼつかないし、妻子との家庭生活も破綻するものと考えて、とつさに同女を殺害してその口を封じようと決意し、昭和六〇年一月四日午後三時前ころ、新潟市中山六丁目二一番一二号倉田第一ビル四〇三号室涌井勝子方において、這つて逃げようとしていた同女の背後から、その頭部を前記赤玉石で二、三回殴打したうえ、自己が着用していたガウンの腰紐を抜いて、これを同女の頸部に一回巻いて強く締め付け、よつて、その場で間もなく、同女を窒息死させて殺害した

第二  金員に窮していたため、同月五日午後二時ころ、右涌井勝子方において、前記殺害時と同一の状態にあつた同室内から、同女の所有していた現金約六万三〇〇〇円、定期預金証書六通(昭和六〇年押第一八号の5ないし9及び12、預金額合計三二七万四二三六円)、総合口座通帳二通(同押号の10及び11、預金残高合計二四六万五九五三円)並びに印鑑四本(時価合計約四〇〇円相当)を窃取した

第三  前記第一の犯行を穏ぺいするため、前記涌井勝子の死体を遺棄しようと考え、同月六日、前記同女方の浴室の浴槽内において、同女の死体を刺身包丁で頭部、胴体部、足部の六部分に切断して損壊したうえ、同日、右胴体部分を、同月八日、その余の身体部分を、いずれも大型ボストンバッグに隠して同市五十嵐三の町九一四六番地二四の被告人方車庫内に搬入して隠匿し、更に、同月二三日、これらのばらばらとなつた死体を同市五十嵐三の町一一一五八番地子の砂防林の土中に埋めて遺棄した

第四、一 同月九日午後五時ころ、前記涌井勝子方において、同女の死亡により、その相続人の所有となつたものの、まだ何人の占有にも属さない状態にあつた現金三万円を、自己の生活費に充てるため、ほしいままに同所から持ち去つて横領した

二 同月一四日午後零時ころ、同所において、右同様の状態の整理ダンスなど約二五〇点(時価合計約九八万七六四〇円相当)を、前記第一の犯行を隠ぺいするとともに、自宅で使用するため、ほしいままに同所から運び去つて横領した

第五  前記第二の窃取にかかる定期預金証書等を使用して預金払戻名下に金員を騙取しようと企て、

一  同月一六日午前一一時三〇分ころ、同市沼垂東四丁目八番三五号株式会社大光相互銀行沼垂支店において、情を知らない妻東亜子を介して、同支店長代理磯野哲夫に対し、真実は涌井勝子から定期預金の解約を依頼された事実がないのにこれあるように装つて、前記窃取にかかる同相互銀行発行の同女名義の定期預金証書三通(同押号5、6及び9)を提示し、同女から右各定期預金の解約を依頼されたので解約して欲しい旨虚偽の事実を申し向け、右磯野をしてその旨誤信させて右各定期預金払戻名下に現金合計二二八万四二三六円を騙取しようとしたが、同人から不審を抱かれたため、その目的を遂げなかつた

二  同月一七日午後零時ころ、同市東堀前通七番町一番戸株式会社第四銀行本店において、行使の目的をもつて、ほしいままに、ボールペンを使用して同店備付けの普通預金払戻請求書用紙の支払金額欄に「\600000」、名前欄に「新潟市中山6丁目21番12号涌井勝子」と冒書し、その名下に窃取にかかる「涌井」と刻した印鑑を冒捺して、涌井勝子作成名義の普通預金払戻請求書一通を偽造したうえ、情を知らない妻東亜子を介して、同本店係員坂田久美子に対し、右偽造にかかる普通預金払戻請求書が真正に成立したもののように装つて、前記窃取にかかる同銀行発行の右涌井勝子名義の総合口座通帳(同押号の10)とともに提出行使して、右金員の払戻を求め右坂田をして正当な預金払戻請求であると誤信させ、よつて、そのころ、その場で、同人から預金払戻名下に現金六〇万円の交付を受けてこれを騙取した

三  同月二一日午後一時四〇分ころ、埼玉県大宮市下町二丁目二九番地株式会社第四銀行大宮支店において、あらかじめ涌井勝子名義の普通預金口座を同支店に開設したうえ、行使の目的をもつて、ほしいままに、同支店備付けの金融機関相互取立委任状用紙二通のうち、一通の委任者欄に「大宮市大門町2丁目28、涌井勝子」と冒書し、その名下に前記窃取にかかる「涌井」と刻した印鑑を冒捺し、もう一通については、情を知らない同支店係員荒井哲をして、その委任者欄に「大宮市大門町2丁目28、涌井勝子」と記入させ、その名下に右印鑑を押捺させ、更に、右荒井をして、右二通の委任状用紙にその他の必要事項を記入させ、もつて、涌井勝子作成名義の金融機関相互取立委任状二通を偽造したうえ、右荒井に対し、右偽造にかかる委任状二通が真正に成立したもののように装つて、前記窃取にかかる株式会社大光相互銀行発行の涌井勝子名義の定期預金証書五通(同押号の5ないし9)とともに一括提出して行使し、右各定期預金を金融機関相互取立の方法により株式会社大光相互銀行から取立て右開設にかかる涌井勝子名義の普通預金口座に入金して欲しい旨依頼し、右荒井をして、同月二六日ころ、前記株式会社大光相互銀行沼垂支店に右定期預金証書五通を郵送させ、これを受領した同支店係員をして正当な解約取立手続であると誤信させて定期預金解約名下に現金合計二九七万四二三六円を騙取しようとしたが、右涌井勝子名義の定期預金が事故登録扱いとされていたため、その目的を遂げなかつたものである。

(証拠の標目)<略>

(当事者の主張に対する判断等)

一昭和六〇年二月二五日付起訴状の公訴事実第一の二及び第一の三について

(一)  まず検察官は、右起訴状において、公訴事実の第一の二及び第一の三として、「被告人は、殺害した涌井勝子所有の金品の窃取を企て、1昭和六〇年一月九日ころ、新潟市内の涌井勝子方(以下、本件居宅という。)において、同女所有の現金約三万円を窃取し、2同月一四日、本件居宅において、同女所有の整理ダンスなど約二五〇点を窃取した。」旨主張し、右各公訴事実記載の日時にも、死亡した涌井勝子の本件居宅内の財物に対する占有が継続しており、同女を殺害した被告人による財物取得行為は窃盗罪に該当するものとしている。

そこで、検討するに、なるほど、涌井勝子は本件居宅に一人で生活していたものであり、右各公訴事実記載の日時に至つても、右居宅内の財物は同女の死亡を知らない第三者にとつて、同女の占有下にあるものとみられる状態が継続していたものであつて、この限りでは、判示第二の窃盗の犯行(昭和六〇年二月二五日付起訴状の公訴事実第一の一)の場合とほとんど異なるところはないのである。しかし、前認定(判示第一)のとおり、被告人が勝子を殺害したのは昭和六〇年一月四日午後三時前ころであるところ、右公訴事実第一の一(判示第二)の犯行がその翌日午後二時ころ同女の死体の現存する情況下で敢行されたのに対し、右公訴事実第一の二の犯行は同月九日午後五時ころ、同第一の三の犯行は同月一四日午後零時ころといずれも右殺害時からかなりの日時が経過したのちに敢行されており、しかも、前認定(判示第三)のとおり、被告人は、その間の同月六日に本件居宅内で勝子の死体をばらばらに解体したうえ、同日及び同月八日にこれを同所から持ち出して被告人方車庫内に隠匿してしまつているのである。このような情況の変化を考慮すると右公訴事実第一の二及び第一の三の時点では、もはや亡涌井勝子の本件居宅内の財物に対する占有は失われたものと認めるのが相当であつて、その相続人による占有の事実も認められないところである。したがつて、殺害犯人たる被告人の所為とはいえ、右各犯行を窃盗とみることはできないところであつて、当裁判所は各公訴事実の同一性の範囲内で判示第四の一、二のとおり各占有離脱物横領罪の成立を認めることとする。

(二)  次に、弁護人は、右公訴事実第一の三(判示第四の二)の整理ダンスなど約二五〇点の財物の運び出しについて、右は被告人が涌井勝子殺害の罪証を隠滅する目的で行つた隠匿行為であつて被告人にはこれを自己のものとする意思がなかつたから不法領得の意思を欠くものというべく、被告人は無罪である旨主張する。

しかし、前掲の関係各証拠によれば、被告人は、右整理ダンス等を運び出す時点において、自己の涌井勝子殺害の犯行を隠ぺいするため、同女が引越したように擬する意図を有していただけでなく、これらの財物を自宅に運び込んで使用しようとの気持をも持つていたことが認められるから、被告人の不法領得の意思に欠けるところはないものといわなければならない。よつて、弁護人の右主張は失当である。

二心神耗弱の主張について

弁護人は、被告人が判示第一の犯行当時飲酒酩酊のため心神耗弱の状態にあつた旨主張する。

そこで、検討するに、なるほど、被告人は右犯行前飲酒しており、この酒の酔いの影響もあつて該犯行に及んだことは否定できないところであるが、しかし、前掲の関係各証拠によつて認められる犯行前の被告人の言動、被害者涌井勝子に対する攻撃の開始と同女に対する殺意の形成、殺害の手段・方法、犯行直後の罪証隠滅工作の状況等いずれの点をみても十分了解可能なものであつて、そこに特段の不自然さや異常な点は見られないうえ、右犯行状況についての記憶の保持も良好であり(尤も、被告人は、当公判廷において、殺害の犯行に関する限りほとんど覚えていない旨供述しているけれども、そのままには措信し難い。)、被告人に精神病、アルコール中毒その他の心身の病的異常を疑うべき具体的事由も見当たらないので、右犯行当時、被告人の事理を弁識する能力及びこれに従つて行動する能力が著しく減弱した状態になかつたことは明らかである。

従つて、弁護人のこの点の主張も採用するに由ない。

(法令の適用)

被告人の判示第一の所為は刑法一九九条に、判示第二の所為は同法二三五条に、判示第三の所為は包括して同法一九〇条に、判示第四の各所為はいずれも同法二五四条、罰金等臨時措置法三条一項一号に、判示第五の一の所為は刑法二五〇条、二四六条一項に、判示第五の二の所為のうち、有印私文書偽造の点は同法一五九条一項に、その行使の点は同法一六一条一項、一五九条一項に、詐欺の点は同法二四六条一項に、判示第五の三の所為のうち、各有印私文書偽造の点はいずれも同法一五九条一項に、その各行使の点はいずれも同法一六一条一項、一五九条一項に、詐欺未遂の点は同法二五〇条、二四六条一項にそれぞれ該当するところ、判示第五の二の有印私文書偽造とその行使と詐欺との間には順次手段結果の関係があるので、同法五四条一項後段、一〇条により、また、判示第五の三の偽造有印私文書の一括行使は、一個の行為で二個の罪名に触れる場合であり、有印私文書の各偽造とその各行使と詐欺未遂との間にはそれぞれ順次手段結果の関係があるので、同法五四条一項前段、後段、一〇条により、いずれも一罪として最も重い判示第五の二にあつては詐欺、判示第五の三にあつては詐欺未遂の罪の刑(但し、短期はいずれも各偽造有印私文書行使罪の刑のそれによる。)で処断することとし、判示第一の罪について所定刑中有期懲役刑を、判示第四の各罪についていずれも各所定刑中懲役刑をそれぞれ選択し、以上は同法四五条前段の併合罪であるから、同法四七条本文、一〇条により最も重い判示第一の罪の刑に同法一四条の制限内で法定の加重をした刑期の範囲内で被告人を懲役二〇年に処し、同法二一条を適用して未決勾留日数のうち一〇〇日を右の刑に算入することとし、押収してある定期預金証書六通(昭和六〇年押第一八号の5ないし9及び12)並びに総合口座通帳二通(同押号の10及び11)は、いずれも判示第二の罪の賍物で被害者に還付すべき理由が明らかであるから、刑事訴訟法三四七条一項により、これらを被害者涌井勝子の相続人に還付することとし、訴訟費用は、同法一八一条一項但書を適用して被告人に負担させないこととする。

(量刑の理由)

本件は、被告人が、愛人関係にあつた被害者を殺害し、その死体の手足等を切断して遺棄したうえ、被害者の現金、総合口座通帳等を窃取したり、窃取した通帳等を使用して銀行から金員を騙取等したという事案である。被告人は、妻子があるのに被害者と親密な交際を続け、自己が失職して無収入となつたのに、これを秘して妻と被害者との間をとりつくろうとしたが、結局これに失敗し、被害者から多額の借金をしてその返済もできなかつたため、同女と口喧嘩した際にこれをなじられるや、激昂して一方的に暴力を振るい、同女を負傷させたことから、その口塞ぎのために同女を殺害したものであつて、その短絡的かつ自己中心的な態度は強く非難されなければならず、殺人の動機には酌むべきものが見当たらないうえ、その態様も、判示のとおり、無抵抗の被害者に対して、その頭部を赤玉石(置石)で強打し、更にぐつたりした同女に止めを刺すべく紐で絞殺した、というもので、極めて残虐、非情である。しかも、被告人は、この犯行を隠ぺいするため、被害者の死体を頭部、胴体部、手・足部の六部分に解体して一旦自宅に隠匿したうえ、人目のつきにくい松林内の土中に埋めて遺棄しているのであつて、まことに冷酷、残忍な所業といわざるを得ない。十年近くの間親密な関係にあつた被告人から、いわれなく、殺害されたうえ切断、遺棄された被害者の無念さは察するに余りあるが、同女の安否を気遣つて各処に消息を訪ね回つた挙句、無残な遺体と対面させられたその兄姉の悲憤も多大であるところ、これに対して、被告人は現在まで全く慰謝の措置を講じていないのである。加えて、被告人は、被害者を殺害後、生活資金等を得るために、被害者の現金や総合口座通帳、定期預金証書等を窃取したほか、右通帳等を使用し、預金払戻請求書を偽造したうえ、情を知らない妻を介してこれを行使等して、預金払戻名下に六〇万円の現金を騙取し、別に、定期預金証書を解約しようとしこれに失敗するや、県外の銀行まで出かけて行つて、被害者名義の口座を開設し、金融機関相互取立の方法で定期預金解約名下に約三〇〇万円の騙取を試みたり、犯跡隠ぺいと自宅使用目的で被害者の家財道具一切を運び去るなどしているのであつて、これらの犯行の悪質性も到底看過できないところである。これらの諸点その他本件の社会的影響等にかんがみると、被告人の刑事責任は極めて重く大きいものであつて、被告人を無期懲役刑に処すべきものとする検察官の求刑にも理由がないわけではない。

しかしながら、他面、本件殺人は計画的に敢行されたものではなく、犯行の衝動性、偶発性は否定できないうえ、死体の損壊、隠匿、遺棄という一連の犯行は思いがけずに殺人という重大犯罪を犯してしまつた被告人が、精神的に追いつめられた状態で苦しまぎれに重ねたものとみる余地もないではない。また、詐欺その他の財産的犯行による被害の大半は既に回復され、若しくは回復される見込みであること、被告人は現在四七歳であるが、これまでに全く前科前歴がなく、家庭人としての道義的責任の点はさておき、おおむね良好な社会生活を送つてきたものであること、当公判廷において、被害者の冥福を祈る旨述べていて、事犯に対する反省の態度がみられることなど、被告人のために斟酌すべき事情も存在するのであつて、叙上の被告人に有利、不利な諸事情のほか、被告人の経歴、家族関係等を総合考察した結果、被告人に対しては、死刑及び無期懲役刑を科することなく、有期懲役刑として最も長い懲役二〇年を科するのが相当であるとの結論に達した。

よつて、主文のとおり判決する。

(堀内信明 奥林 潔 志田博文)

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